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定義森林鉄道跡の廃木橋群 その5

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定義森林鉄道跡の廃木橋群 その4 - かまねこ古道

 

 


定義森林鉄道の廃木橋群 第4回 スラブの橋と木橋【廃線・廃橋】 定義森林鉄道跡を歩く(定義如来~十里平編)【宮城・定義山】

 

 前回は潔く撤退し、帰宅後改めて探索再開のための策を練ります。といっても前回探索を断念した地点以降は地図上からもドローン偵察状況からも明らかなとおりとんでもない断崖絶壁です。そうであれば残された方法は事実上一つだけ。

 探索ゴール予定地点から逆に辿るしかありません。若干不本意な感は否めませんが背に腹は代えられません。

 

 動画で説明したとおり、地図上や周囲の地形を見ると、軌道が川を越えていたであろう地点はある程度絞り込むことができます。

 しかし、前回探索断念後別の目的でその周辺を通行した際には、軌道の痕跡を見出すことはできませんでした。周囲はもうかなりの程度自然に還りかけていますので、橋などの明確な痕跡が残っていなければ発見は困難となる可能性があります。

 

 冬の終わりのある日、本格的な探索に赴きました。これまで説明してきた通り、軌道はほぼ間違いなく大倉川の右岸を通っていたと思われますので、この辺りのどこかでこの自動車道と交差する地点があると思われます。すなわちこの道路の右側に小径のような軌道跡が存在しているはずです。

 

 しかし道路上を何度か往復しても、軌道跡の条件を満たすような小径は見当たりません・・・

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 やむを得ず、傾斜角的には鉄道とは考えられない道路跡を下ります。

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 するとかなり広い平地の中に一軒の廃屋が。

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 見た感じこの森林鉄道よりはかなり後の遺構のようです。物の様子からはここで生活していたような印象もあります。

 

 廃道名物こつぶ

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 廃道名物ジョージア

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 見た感じ周囲に橋のようなものは見当たりません。

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 この時点で懸念していたのは、もしも川向うに軌道跡が発見できたとして、渡河することができるのか、ということです。この周囲の川は、これまで御覧いただいた通りかなり急峻な地形となっており、場合によっては川床まで降りることが不可能だったり、水位によっては渡渉することが事実上不可能、ということも十分あり得るように思えました(季節柄足がずぶ濡れになったらその時点で探索続行は無理なのです・・・)。

 

 そんな不安を抱きつつ探索を続けたところ・・・

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 川の向こうに橋が見えます!

 場所的にも雰囲気的にも森林鉄道の橋であることにほぼ間違いありません!しかもかなり形を保って残っているように見える!

 

 近くに行ってみると・・・

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 遠目には上部構造も残っているように見えたのですが、それは錯覚でした。

 桁より上は完全に崩落しています。しかしなぜか橋脚だけは辛うじて残っています。

 この橋については「9号橋」と呼びます。(お察しの通り、探索の中断がなければこの橋が最後に発見されるはずの橋でした。つまり今回の探索で発見された橋は合計「9基」ということになります。)

 

 しかし気を取り直して考えると、このように川の中の木製橋脚が独立して残っているというのは相当に珍しいことではないかと思われます。普通の流れだと橋脚が流され、それに伴い橋全体が崩落するという流れになりそうな気がするのですが、上部構造だけすっかり消えてなくなっているというのはなぜなのでしょうか?もしかしたら大橋梁のように人工的な破壊措置が取られたのでしょうか?

 

 

 できれば完全な形の橋を見てみたかったですが、この橋脚だけでも見ていてなかなか飽きないものがあります。

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  筋交いなどがいい感じです。

 

 

 そして、なぜ現道から発見しづらかったかというと・・・

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軌道跡は水路に改変されていました。これではなかなか気づかないわけです。

 

 

 そして一番の懸案事項、渡渉の可能性ですが・・・

 通常川を歩いて渡るとすればウェーダーを着用するか、夏などであれば裸足になって進む、靴が濡れるのも構わず進むという方法もあり得ますが、今回はそのいずれも使えません。方法としては、転倒の危険があるためあまりお勧めはできませんが、石を足場代わりにして飛び越えていくしかありません。

 しかし記録的な暖冬とはいえ冬の終わりのこの時期、ある程度の水量があり、飛び越えるルートもなかなか見つかりません。こういった場合、さらにお勧めしがたいのですが、水中にある石の頭も足場代わりに利用する方法があります。ゴアテックスのトレッキングシューズならば、運が良ければ浸水しないで飛び越えることができます。

 しかしここで注意しなければならないのはその石のすべりやすさです・・・

 濡れている石、水中にある石は、当然のことながら苔などが付着して相当滑りやすくなっているものがあります。したがって石伝いに進む場合でも濡れていない石を選ぶのが鉄則なのですが、今回のようにそれ以外の手段がない場合、試しに一度安全な場所から片足を置いてみるなどして石のすべりやすさを慎重に見極めてから足を置くことで転倒を防ぎながら進むことができます。

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そして今回濡れずに進める唯一の足場と思われたのがこの石です(石B)・・・

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 一見写真では石Bから一気に対岸へ渡れそうに見えますが、実際には石Bに一度片足を置かないと安全に渡ることはできません。

 石Aに立ち、試しに石Bに片足を置いて確認したところ、ほとんどすべらない!

 意を決してその石に左足をかけ、体重を傾けて右足を右岸側に移動させます。

 何とか濡れずに対岸に着くことができました!

 しかしこの石、後にとんでもない罠であることが判明します・・・

 

 対岸にはかなりはっきりとした軌道跡が続いています。ここまでは心配がすべて杞憂に終わっています。

 橋周辺にはある程度の広さの平地が広がっています。軌道自体もこれまでとは違い、見た感じで2倍程度の広さがあるように思えます。その気になれば複線にもできそうです。全く証拠はないのですが、もしかしたらここが列車の行き違いスペースになっていたのかもしれないと思いました。

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 先に進みます。歩きだしてみるとこの軌道跡はかなり歩きづらい!季節柄もあると思いますが相当ぬかるんでおり、一部は泥沼上になっています。その4までの堅固な路盤とは対照的です。おそらくは地形的に水の通り道になってしまいやすいのでしょう。

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 数百メートルほど歩くと、小さな橋が現れました。

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規模としては5号橋と同程度の、それほど大きくない橋です。しかし保存度は良好でなかなかインパクトがあります。桁が一つ失われており、斜めになってしまっている横木も目を引きます。

 それに固定に使われている釘の大きさも驚きます(そもそも鉄道橋を釘で組み立てているというのも個人的には驚きですが)犬釘とも異なるように見えますが、5寸釘をはるかに超える大きさです。

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 現役当時の姿を見てみたかった気もしますが、現在の苔に覆われた姿もなかなか魅力的です。しかしこの絶妙にバランスを保った姿を見られる時間もそれほど残されてはいないでしょう・・・

 この橋は「8号橋」と呼びたいと思います。

 

 やや日が傾きかけていますが、GPSとにらめっこしつつ安全に帰還できる限度まで探索をつづけます。

 

 第6回に続く・・・

定義森林鉄道跡の廃木橋群 その6(最終回) - かまねこ古道